和室の襖ブランドからクラフト雑貨へ – 京ものストア
和室の襖ブランドからクラフト雑貨へ
2023.10.01

ふすまクラフト(森本織物)

 18世紀中頃の生平(きびら)織に発する木津川市の織物産業は、明治時代には麻や綿織物、蚊帳や襖地と移り、昭和50年代には全国の織物襖紙の約40%を占めていたそうです。和室の時代には襖紙として用いられ、洋室が増えた高度成長期には布地壁紙の需要も加わって大きく発展し、織物襖紙では全国シェアの約80%を占めるまでになりました。けれども、その後の生活スタイルや住宅傾向の変化から和室や襖の需要が減少し、最盛期には26社を数えた織物メーカーも現在では6社と激減しています。

 こうした中で各メーカーは織物産地としての新たなブランディングを図ろうと平成30年に“京織ふすま紙”として、素材を活かした二次製品の開発をスタートしました。なかでも“ふすまクラフト”というネーミングで新たなもの作りに取り組んでいるのが今年で創業110年を迎える森本織物です。

和室インテリアの主役として襖 は近年まで大きな需要があった

和室文化と共に移りゆく市場

 「かつて木津川の南側は綿花が、北側は麻の栽培が行われていて、農閑期には機織りが行われるようになったと聞いています。当時から奈良は晒しの生産が盛んで、蚊帳の生地の受注があったそうです。明治の中期から後期になると住宅の襖が、紙からより強度のある織物に替わるようになり、当地でも襖生地の生産にシフトしていったようです。そのなかで山水画など襖絵に描かれていたものが襖地にも取り入れられるようになり、襖の需要が増えていった時代には豪華さを競うように多彩な製品が作られていったようです。当社もそうですが、襖紙の生産は分業で、我々は生地を織って裏打ち紙を貼る工程を担い、印刷や金箔加工などの加飾は関東で、襖紙を小売店に販売する企業が製品の企画を行うブランドメーカーという役割です」というのは4代目の森本昌利さん。森本さんが家業に戻った23年前にはすでに最盛期の生産量の2割程度まで減っていたそうで、“このままではもっと減っていくだろうし、これをどうにか止めるには新たな販路の開拓が必要だ”と感じた森本さんは、それまでのスポーツアパレルで企画を担当していた経験から、新たな商材の開発を試みます。そのひとつが和紙の加工技術を活かした調湿シートです。美濃の和紙、備長炭、薬剤と4社で共同開発したカーボンシートは大手引越しセンターを通じて販路ができ、今では売上の45%を占めるまでに成長しました。

織物襖紙の全国シェアの約80%を占める木津川地域の伝統技術 “京織ふすま紙”

地域ブランドを目指して

 天然素材や合成繊維の織物に裏打ち紙を合わせた織物ふすま紙。耐久性に優れ、独特な光沢・質感があり、かつての障屏画の歴史を発展させるように多彩な加飾を施すことで和室の主要なインテリアとしての役割を持っていました。やがて住宅様式の変化から襖の需要が減少していったときには、木津川でも洋室の壁紙に活路を見いだそうとする織物メーカーもあったそうです。「和室が減ってフローリングの住宅が増えていくと織物の壁紙はなかなか使ってもらえません。値段も違いますし、壁紙全体のシェアからみれば、織物壁紙の割合はわずか1%ほど。世の中の大半の壁紙は塩化ビニール製です」。織物の価値観を生かした製品として、壁紙が代替として生産量をキープしていくのは難しいという現実のなかで、森本さんは木津川地域で培われた伝統の技をベースに、ふすま紙の魅力を今に伝えよることはできないかと思っていたそうです。今日、木津川市の織物メーカーが掲げる“京織ふすま紙”の名は、地場産業として西陣織や丹後ちりめんのような地域団体商標にしようという木津川市の働きかけと織物メーカーによる組合設立の機運から生まれたものです。2020年に設立された山城織物協同組合の理事長も務める森本さんは、地域団体商標を目指して京織ふすま紙の知名度アップのための広報活動にも力を注いでいます。

展示会への出展を契機に新たな市場開拓を狙う“ふすまクラフト”

ネット市場と展示会から次のステージへ

 こうした地域活性化と並行して森本さんは自社でも、京織ふすま紙を生かしたものづくりに取り組みます。きっかけはネット販売が一般化してECサイトという販路が手軽なものになって、トライアルがしやすくなったことでした。「最初に作ったのはふすま紙を使ったプレゼントBOX。女性社員のアイデアが発端で、ECサイトのオープンと同時に中信ビジネスフェアに出したところKBSラジオで紹介され、さらにTV番組でも紹介いただきました。展示会への出展はお客さんの意見も聞けますし、いろいろ声をかけていただくこともあるので貴重な場だと思います」という森本さんは京都ギフトショーにも2回目から参加し、折り紙の菓子皿や匂い袋を入れたBOXなど試作を通じて市場の反応を探っています。「手作りメッセなどのクラフト市場では端材のパックがよく売れたり、ギフトショーでは織物の高級感を生かしてワインのギフトBOXを作って欲しいという声をかけてもらったり、ロンドンのSCに出したいという海外からのオファーをもらったり、手応えは感じています。実際にお茶の缶に織物を貼って海外で販売されているところもありますし、課題も多いですが、少しずつ克服して進めていきたいと思っています」という森本さんは、襖生地を使ってクラフトワークキットを販売する“ふすまクラフト”をスタートさせました。織物の受注からスタートしたことで、長年にわたって独自の価値観を発信する機会がなく“材料として売ってきたのでブランディングができていなかった”という反省から、まずは素材としての魅力を見直し、使い手の発想を刺激するクラフトキットを提供することしにしました。同時に展示会などで得たアイデアから新たな商品開発に向けての試作も繰り返しています。襖の織物生地という、いわば隠れた存在から自ら発信する京織ふすま紙という素材へ、さらには選ばれるクラフト雑貨へのステップを歩み始めたふすまクラフトのこれからに注目していきたいと思います。

ふすまクラフトギフトセット
初めての方でも手工芸をお楽しみいただけるクラフトキットと京都名産品のあぶらとり紙のセットです。クラフトキットは、和紙や織物などの「京織ふすま紙」の素材を用いた材料で手工芸を楽しんで頂く商品です。作り方はお客様ご自身でご自由にアレンジしてお楽しみください。

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いとしあぶらとり紙4種セット
表紙にデザイン豊かな「京織ふすま紙」を使用した、竹炭配合のあぶらとり紙。
紙の内側に塗布された竹炭がより多くの皮脂を吸収して、さらさらとしたすっきりお肌になります。

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ブックカバーやティッシュケース、菓子皿、衝立など、試作と製品化を通じて京織ふすま紙の可能性を探る“ふすまクラフト”

森本織物株式会社

京都府木津川市山城町上狛野日向5番地

TEL  0774-86-2275

https://r.goope.jp/sr-26-2636110189/

ふすまクラフト

https://www.fusuma-craft.com/