古来より伝えられてきた数多くの京都の伝統工芸品。季節の装いの一つであり、小粋さを演出するグッズ、また儀式や芸能に欠かせない小道具、お客様を迎える部屋飾りとしての用途もある扇子も千年の都が育んだ工芸品の一つです。
扇子の製造は平安時代に京都ではじまり、江戸時代に一般に普及したと言われています。竹から扇子の骨を作る骨屋、扇面を作る紙屋、扇面に絵を描く絵屋、箔を貼る箔屋、扇面を折る折屋、折られた紙に扇子の骨をつけて仕立てる付屋と細かく分業化された製造工程は、当時から始まり今も変わらないそうです。
明治44年に絹扇子の折職人であった伊藤常吉が創業したという伊藤常は、それらをまとめるプロデューサー的な役割であり、過去の佳きものに負けない、いやそれ以上のものを次世代に伝えていく使命を担って、ものづくりに取り組んでいるといいます。
涼を得るためにあおぐ扇子は夏扇子と呼ばれ、扇骨の数はいろいろで一番多いものでは60本もの骨を用いるとか。骨数を多くするためには1枚1枚の扇子の骨を薄くするので、あおぐと柔らかな揺らいだ風が得られるそうです。
<扇子作りの工程>
扇子の骨用に薄く削られた細長い板を成形加工し、繊維質の荒い柔らかな芯紙の表と裏に貼りがあって強い皮紙を貼り合わせて扇面を作ります。
扇子の起源は桧板を綴じ合わせて作った桧扇と伝えられていますが、その次に現れたのが、5本骨の蝙蝠(かわほり)扇。絵を張った扇は紙はり扇で、その語音がしだいに「かわほり扇」と変化していったと言われています。また蝙蝠の文字は扇を開いた形が中国、朝鮮で吉祥獣として扱われている蝙蝠(こうもり)が羽を広げた形に似ているからという説があります。
扇子は部屋飾りや贈答にぴったりの縁起物
扇子は形が末広がりであることから、昔から縁起物とされて床の間や玄関の飾り物や、贈答品として重宝されてきた歴史があります。
お部屋に飾りとして置く飾り扇子は、今では住まいだけでなく飲食店などの店舗にも広く使われていて、季節や用途に合わせたさまざまな絵柄が作られています。
扇子司 伊藤常
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