wayuplus+
FUDGEが見つけた京都の素敵
「伝統工芸が放つ繊細な輝きで大人な手元にアップーデート」というキャッチは、大人女子のこだわりライフスタイル誌FUDGEのオンラインストアに掲載されているwayuplus+のリングに付けられたもの。同誌の3月号“パリジェンヌ、京都へ行く”という特集と同時に開催された京都の伝統産業×FUDGEをテーマにしたお買い物イベント“FUDGE Marché(ファッジ マルシェ)”のためのコラボ製品として選ばれました。
「ジュエリーの宝石にかわるものが七宝焼でもできるのでは…」と京七宝アクセサリーに取り組んできた伊佐采恵さんが提案したのは、綸子織物(りんずおりもの)をモチーフに光の角度によって色や模様が異なって見える編線技法を用いたもの。FUDGEからのアメジストとエメラルドというリクエスト応えて、有線七宝で使用する純銀のリボン線をひとつひとつ手間をかけて編み込んだこの技法を使って生まれたリングです。
七宝は宝石に代わるジュエリー
伊佐さんがwayuplus+を立ち上げたのは2016年。ジュエリー製造の会社で製作に携わる中で「自分の親しみのあった七宝焼が宝石に代わるものになるんじゃないかとずっと考えていました。」という伊佐さん。実はお母様が七宝作家とのことで幼少期からなじみのあるものだったのです。大学で洋画や現代美術を専攻し学生時代から作家活動も行っていましたが、結婚を機に休止、その後育児が一段落して京友禅金彩加工やジュエリー製作に携わる中で、伝統工芸のものづくりへの興味が高まり、再びステージを変え自身で本格的に独立し製作を手がけようと起業したといいます。「伝統工芸の現状を知り色々と考えている中で、自分にとって一番身近にある伝統工芸が七宝焼だったんです」という伊佐さんですが、当初から視点はアクセサリーにありました。「七宝焼は身近に気軽に楽しむことのできる工芸であり、自分にとって七宝焼アクセサリーは小さなキャンバス。様々なものづくりをしてきた経験から七宝焼にも活かせるものがあると思っていました。でも、いざ始めて見ると失敗やわからないことの連続。たびたび母でもある師匠にわからないことを聞きながら試行錯誤のスタートでした。」という伊佐さんはブランド名を師匠の作家名である和幽を拝借してwayuplus+(わゆうプラス)としました。
当初は手づくり市やマルシェに出店したり、グループ展や京友禅作家との2人展などに出展する中で、帯留を呉服店で扱ってもらえるようになりました。「ブランドを立ち上げ個人作家として活動を行っていましたが、本格的な事業として継続していくために商工会議所に相談し、ギフトショーや知恵産業フェアなどにも出展する機会をいただきました」。ものづくりと販路づくりの両面が大切なのはどんな業種でも共通の課題ですが、作家にとっての販路開拓、しかもたった1人での活動は並大抵のことではありません。より多くの人の目に触れることで、販路だけでなくものづくりの課題が生じることもあるでしょう。バイヤーやユーザーの声は時には迷いのタネになることもあるでしょう。伊佐さんはそのあたりをどう考えてきたのでしょうか。
カジュアルに楽しめる七宝を提案したい
「自分はもともと伝統工芸の世界で学んできたわけではなく、伝統的なものづくりの職人さんの視点とは少し異なり実際わからないことも多いのですが、かつて制作活動や色々なものづくりをしてきた経験が自分を支え、今の活動につながっていると思います。」という伊佐さんが考える七宝焼の価値観は、ある意味で伝統のエッセンスから少しカタチを変えて表現することかも知れません。
「七宝焼は重厚感が魅力だと思っています。ジュエリーやアクセサリーという分野でも伝統を背負った重さもありますよね。私は着物の帯留も作りますが、重厚感のあるものにバランス良くフィットする特性があると思います。でも、その中でもできるだけ現代のセンスに合う軽やかでカジュアルなものを提案していきたいと思っています。松竹梅や吉祥文様をモチーフにすることもありますが、日本の四季や暮らしに受け継がれてきた自然や文化的ストーリーを作品に落とし込み、日本人として大切に継承していきたい和の文化を匂わせながら、その中でもモダンでカジュアルな作品づくりをしていければいいなと思っています。」
身近なファッションアイテムとして
「アクセサリーは身につけることを前提とするものです。伝統工芸というと、どうしても伝統を重んじて技術的なところに向かいがちな部分もありますが、アクセサリーの使用目的はあくまでもファッションアイテム。主役は身に着ける人だという事を忘れずに、現代にふさわしいデザインでその人を際立たせるためのアイテムとして制作したいと思っています。また、欲しいとか、身につけたいと思ってもらえる工芸品でありたいと思いますね。」という伊佐さんの七宝ジュエリーは、先のFUDGE誌面でもモデルの指先に輝いています。FUDGE創刊20周年を記念した京都市とのコラボレーション “京都の伝統産業×FUDGE”は、旧三井家下鴨別邸と出町桝形商店街を会場にイベントが開催され、コラボ商品はFUDGEオンラインストアでも紹介されました。“現代に馴染む心地よい和のムードがたまらない”というキャッチコピーがついたファッションフォトに登場するリングは、工芸品の重厚感はなく、目を引くジュエリーとして存在感を放っています。
いいものを長く使う文化へ
「私は前職で“ぽっちり”の存在を知りました。これは舞妓さんが代々受け継いで使う帯留です。この花街の文化のように、いいものを大事に長く使っていくという風習は、時代の課題でもあるSDGsやサスティナブルの理念にかなうものであると思います。また、壊れても修繕することができる伝統工芸品はこれからの時代に改めて注目され見直されていくものではないかとも思っています。」という伊佐さんのものづくりに対する視点は、精神的な要素が強く求められるようになったファッション市場にもフィットしているように思います。その志向は今回のFUDGEの伝統産業への視点にも共通していて “良い物を長く使いたい方におすすめな京都の伝統工芸品。確かに受け継がれてきた工芸のきめ細やかさと、FUDGEのフィルターを通したデザインで夢のコラボが実現”というコンセプトには、消費社会の転換が現れているように感じます。
生きていくために必要なものではないけれど、人生にとって欠かせないものという価値観を提供してきた世界のラグジュアリーブランドにも、より豊かな人生とは何かを問いかける役割が生まれているといいます。伊佐さんのリングをはじめ、今回のコラボ商品に新たな価値を見いだしたFUDGEガールたちが、伝統工芸に目を向け、伝統産業が活性化していくことを期待しています。
wayuplus+
https://www.instagram.com/wayuplus_cloisonne/
京都の伝統産業×FUDGE