京の金彩工芸
薄い金箔や金粉を用いて花鳥風月を艶やかに彩り、着物や工芸品を華やかに引き立てる金彩という技。京都では友禅染の加飾技法として磨かれ伝統工芸として受け継がれてきました。
華やかに着物を彩る金彩の技
室町時代に中国から伝来したといわれる金彩は、着物に様々な金属箔や粉を接着加工する技術の総称で、押箔、摺箔、盛り上げ、泥金描など様々な技法が複雑に絡み合ってひとつの表現となります。その華やかな魅力から婚礼衣装や振袖、留袖など礼装に多く用いられてきました。京友禅に携わった後、昭和48年に金彩職人として独立した竹中秀美さんは「金を入れることによって着物が豪華になって、ポイントに刺繍を入れるとさらに華やかさが増す」といいます。生地に金があることで花や葉が立体感を増し、奥行きのある華やかに柄に仕上がるのです。
デザイナーの発想が工芸を刷新
この金彩の技を身近な生活雑貨や商品の付加価値作りに活用しているのがデザイナーの竹中大輔さん。和装産業が縮小していく中で、金彩の未来を危ぶむ父の姿を見て家業であり、優れた金彩職人である父の技術を生かしたいと新商品の開発に取り組みました。
大輔さんがまず手がけたのは、着物の端切れに金彩を施したグラスマーカー。
パーティシーンに華やかな演出を加えるものとして、友禅の優美な魅力を現代的にアレンジしたものともいえます。
その商品には「takenaka kinsai」という銘がつけられ、パッケージのデザインもモダンでおしゃれ感あふれるものに仕上げました。
金彩の未来へ
金彩の魅力を受け入れてもらいやすいカタチで表現していくと考える大輔さんはアートフェアなどにも積極的に出展し、アートに敏感な若い人たちの反応を見ることで新たな商品のインスピレーションを得るといいます。百貨店への出店とは違う感性の人たちと出会うことで、いろいろな発見があり、新しいものづくりのヒントを見つけることが出来るそうです。
「職人は普遍的にいいものを作ろうとする、デザイナーはお客様と向き合い新しいものを生み出そうとする、これをバランスよくブレンドできるといいかなと思ってます」という大輔さんのテーマは「これからの金彩」。父が受け継いできた和装で培われてきた工芸の技を、いろいろな分野に広げていくことで、新たな金彩工芸の世界を作り出していきます。
takenaka kinsai
京都市右京区嵯峨大覚寺門前八軒町20-12
Tel.075-871-4635