途絶えた伝統を復活。 京こまのかわいいグッズとギフトの可能性 – 京ものストア
途絶えた伝統を復活。 京こまのかわいいグッズとギフトの可能性
2019.09.18

京都で唯一、日本でひとつだけの京こま工房

かつて公家の女性が着物の布を竹の芯に巻いて作ったお座敷独楽(おざしきこま)に由来するという「京こま」。一般的に「こま」は木を削って作りますが、「京こま」は芯棒に色とりどりの布を重ね巻いて作った、京都だけにしかない伝統工芸品です。 こまが、お正月のおもちゃとして定着したのは明治以降。昭和初期には観光土産として数多く生産され、京こま工房も10軒程ありましたが、30年ほど前には一度途絶えてしまいました

現在、唯一の京こま工房「雀休」を営む中村佳之・かおるさんご夫妻。佳之さんは祖母から父へと受け継がれた工房で小学生の頃から楽しんで店を手伝い、中学生の頃には作ったこまをお店に並べてもらったり、作ることが好きだったといいます。けれども需要の減少から廃業が相次ぎ、父の工房も1983年頃には廃業に追い込まれました。医療機器メーカーに就職していた佳之さんが退職して、京こま職人としてスタートしたのは35歳。父や他の職人たちの残した技術をだれも受け継がないのはもったいないという思いと、生計を立てられるかという不安。会社勤めをしながら、空いた時間にこまを作り、魅力的な商品づくりを研究し、悩むこと2年。廃業から約20年を経ての再興でした。

工房+店舗から発見が生まれる

父の時代の京こま職人たちは、製造のみを行い販売は小売店に委託する形でした。中村さんも最初は同様に自宅のワンルームからのスタートでしたが、工房見学や体験などの依頼が相次いだことから店舗を構えることを決意します。2008年に二条城近くに店舗をオープン。作るだけでなく売ること、お客様と会話することで商品開発にも大きなヒントを得ることができるようになりました。

そこから生まれたのが小さなこまをあしらった「京こまストラップ」や厄を払う「七色厄除け」などのアクセサリー。またこまそのものに造形を施した創作こまの数々です。モチーフは祇園祭の山鉾、十二支の動物、京野菜などなど、かわいい置物のように見えますが、すべてこまとして回るもの。伝統の技と遊び心がひとつになった優れものといえるでしょう。

京こまのイヤリングとストラップ。指先ほどの小ささのこまですが、ちゃんと回ります。細かな作業が求められるので、製作には思いのほか時間がかかります。
京野菜こま5個セット
人気の「京野菜シリーズ」。賀茂なすや金時にんじん、聖護院かぶらなどのかたちをしたキュートなこまがくるくるとまわります。
このシリーズから、錦市場の乾物屋さんとコラボした湯葉や麩の「乾物京こま」も生まれました。

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お客様の声に応える

雀休では毎年新しい商品を作りだしていますが、この中にはお客様の声から生まれるものも少なくありません。雛人形を作ると七段飾りを作ってほしいとか、ぼんぼりも回るこまにしてほしいとか、リクエストはオリジナルのオーダーにもつながっています。

色の組み合わせの細かな注文はもちろん、ハワイの友人に贈りたいので海をイメージして作ってほしいというオーダーもありした。「こまは作ってみないとわからないので、試作をしてお客様とすりあわせしていきます」というかおるさん。色の見え方は角度によっても変わるので、スケッチだけではわからない立体物の特性をお客様のイメージと合うように調整していくのだそうです。

喜寿の会の御礼品にオリジナルの「京こま」をオーダーした演出家の畑岡独我氏は、独楽を廻してみるとなんとも癒される素敵な時間が訪れると記しています。
七十歳と七重の布を掛けた「京こま」はギフトとして大人の遊び方を教えてくれました。

職人の個性が出る「京こま」づくり

「京こま」づくりは、ひもを竹や漆の芯に巻きつけて、端をのりでとめ、また別の色のひもを巻く。この作業の繰り返しですが、指先の感覚だけで微妙に調整を加えるのですが、巻きのバランスが悪いとうまく回らないので、職人の技と経験がものをいいます。完成した商品はすべてきちんと回転するかひとつひとつチェックしていくとか。個性的なかたちをしていても、すべてきちんとまわるように計算されているのです。

紐は京こま専用に作られたものではなく、その時代に流通していた紐が使用され、真田紐(さなだひも)、木綿紐、ナイロン紐と変化してきましたが、巻き方や接着の点から現在の木綿の平紐となったそうです。

職人によって巻き方の向きや最後の紐の処理の仕方などに特徴があるとのことで、こまの博物館などで古い物の中に中村さんの先代のものを発見することもあるそうです。

巻くときの力の入れ具合にも気を配りつつ巻いていきます。らせん状に形を伸び縮みさせて角度や形を整え、全体をコーティングして固めます。

店頭に飾られた製作中のこま。コーティングの乾燥過程ですが、この後、心棒をカットして仕上げていきます。

こまは世界をまわる

多くの観光客が訪れる京都ですが、より多くのお客様の目に触れ、京こまのファンになって欲しいと、ご夫妻は、全国のデパートにも実演販売に出かけていき、各地にリピーターも生まれています。また京こま作りの体験も手がけています。佳之さんが作った紙芝居で歴史を語り、自分の手でこまを作っていただくことで、手仕事の醍醐味やこま作りの面白さを実感してもらうためです。 世界中どこにでもある元祖玩具といわれるこまですが、ほとんどは木製や陶器製で、布を使ったこまは珍しく、TVで紹介されると全国のマニアから問い合わせがあり、NHKワールドの番組やSNSで紹介されると海外からもお店を訪れるお客様が増えるそうです。特にイスラエルではお祭りにこまを使う文化があるとのことで、同国からのお客様が多いとか。二条城に近いこともあって雀休のお店の前を通る外国人が、店に並ぶ多彩な京こまを目にして、すぐにコマだと反応している様を見ると、この文化は世界共通のものだと改めて実感するそうです。

京こま紅白 金箔付
海外からのお客様に人気があるのは、日本らしい紅白や金箔を用いたもの。

京こまが主役の空間づくりへ

全国のデパートをはじめ、修学旅行や団体の実演・体験など京こまに触れていただくために、いける限りは出かけていき、より多くの人に知っていただきたいという中村さんご夫妻。かおるさんは、お正月にパブリックなところで飾っていただける大きなこまとか、空間プロデュース的なことも提案していきたいといいます。京こまがオブジェやシャンデリアになって、イベント空間を彩る日も近いかもしけません。

雀休(ジャッキュウ)

京都府京都市中京区神泉苑町1

〒604-8371

Tel : 075-811-2281

営業時間 : 11:30~18:00

定休日 日曜・月曜

https://www.shinise.ne.jp/jakkyu/