奈良時代に仏教と共に中国から伝わったとされる和ろうそく。江戸後期から明治にかけて貴族、武家、富裕な商人に広く使われるようになりましたが、灯りとしては当時の庶民には高嶺の花で一般的には菜種油の灯りが使われていたようです。
しかし明治になって製造されだした安価な西洋ローソクの普及、後には電気照明の普及によって、和ろうそくは社寺や仏壇という限られたところで用いられるものになっていきます。
この和ろうそくの伝統を守り、昔ながらの原料と製法にこだわり一本一本手作りしているのが中村ローソクです。
和ろうそくの大きな特徴は、その独特の燃え方にあります。空洞の芯が中に入り空気の流れを作るため、炎が大きくゆっくりと揺らめき、神秘的で情緒のある雰囲気を醸し出すのです。このゆらぎが持つヒーリング効果が知られるようになり、海外や若い世代から和ろうそくに関心が寄せられるようになりました。
しかも植物性の原料で作られている和ろうそくは、石油系原料から作られる西洋ローソクに比べて油煙が少なく室内を汚さないという点からも注目されています。中村ローソクでは、この新たなニーズに応えるデザイン性の高い和ろうそくの製品化に取り組んでいます。
伝統的な製法を守り、丹精込めた手作りの味わい
創業時から今に至るまで、和ろうそく作りの工程は変わりません。和紙にイグサの髄を巻いた芯を竹串に刺し、木型に入れ、蝋を流し込みます。
蝋が固まったら木型から取り出し、生地を日光にさらして白くし、ほどよい温度に保ちながら、よく練った上掛け用の蝋を手で生地に擦り付けていきます。これを清浄生掛けといいます。朱色のろうそくの場合は、朱色の蝋を上掛けします。この後、余分な蝋を切り形を整えます。
飾って楽しむ絵ろうそく
和ろうそくは灯りとしてだけでなく、お供え・おつかいものとしての意味合いも持っていました。仏壇に花の代わりにお供えするという起源を持つ絵ろうそくを、インテリアとして楽しめるように多彩な絵柄をろうそく絵師が一本一本手描きして、付加価値の高いアイテムに生まれ変わらせました。
櫨蝋(はぜろう)栽培の復活プロジェクトが生んだハンドクリーム
現在、和ローソク需要の減少から原料である「ぶどう櫨」の生産農家が、和歌山県に一戸を残すのみとなり、将来的な安定供給への不安から中村ローソクをはじめ伝統工芸職人と京都市が櫨(はぜ)の栽培を志し2015年から「京都“悠久の灯(あかり)”プロジェクト」をスタートしました。
このプロジェクトでは櫨蝋の素晴らしさを多くの方に知っていただくという主旨から「和蝋燭職人からのおすそ分け 玉締め搾り櫨蝋入りハンドクリーム」を限定生産しています。昔から舞妓さんや歌舞伎役者さんの化粧下地としても用いられてきた櫨蝋の魅力を実感できるハンドクリームです。
有限会社 中村ローソク
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